足場工事で大事なのは、作業員が安全に組立を終えることです。安全措置が講じられていても、年に数十件の墜落・転落事故が起こっているのが現状であり、安全対策をより強化する必要があります。
そこで義務付けられたのが、フルハーネス安全帯を着用することです。
この対応を怠ると、懲罰や罰金刑が課せられることもあるので、義務化の内容やいつから具体的にスタートするのかを解説します。
足場を組み立てる作業というのは、当然ですが動き回るので「フルハーネスを着けると邪魔になる、逆に危ない」と思う職人さんもいるかもしれません。
それでも着用しなければならないのは、ベルト型安全帯では安全性が確保できないからです。
ベルト型安全帯というのは腰に巻くシンプルな構造なので、墜落をしたときに体が抜け落ちてしまう可能性があります。
また、体を支えるための支点も1つなのでバランスが取りにくく、落下時に腰や胸部を圧迫してしまいます。
フルハーネスであれば体が抜け落ちることもありませんし、肩から腰までをカバーすることで高所作業の安全性を高めて、墜落や転落による死亡事故を防ぐことにも繋がることから着用が義務化されることになったのです。
義務化されてから、まだ足場工事をしていない場合、どのように切り替わっているのか分からないという方もいるでしょう。
ここでは、新しい義務化への対応を紹介します。
現在は義務化が完全に施行されているため、旧規格の安全帯を使うことはできません。
そのため、新規格の安全帯を使う必要があります。
新規格では、「1本吊りのフルハーネス」もしくは「1本吊りの胴ベルト」という2つの型が安全帯として認められています。
新規格の安全帯は「墜落制止用器具」という名称に変更されているため、購入の際にはこの名称のものを選びましょう。
フルハーネスを着用する使用者は、安全衛生特別教育を受講することが義務付けられています。
足場工事というのは、着用義務条件となる「高さが2メートル以上で作業床を設けることが困難な場所での作業」に該当しているため、特別教育を受けなければなりません。
教育を受けないまま着用するのは法令違反となるため、必ず受講しましょう。
2019年2月から始まったフルハーネスの着用義務化の内容が完全に切り替わるのは、2022年の1月2日からとなっています。
2022年1月1日までが切り替わるまでの猶予期間でしたが、現在は完全に切り替わっているので、新しい規格のものを使っていない場合は懲罰対象となるので注意してください。
フルハーネスの着用義務がある作業は多種多様ですが、主に足場工事や建設工事などが挙げられます。
足場工事の場合、以下のような環境での作業が義務化となっています。
・囲いや手すりを設置するのが困難な作業現場
・高さ2m以上で、作業床がない現場
ちなみに、ハーネスを装着していても、落下する時に地面に達するリスクがある場合のみ、「胴ベルト型を着用しても良い」となっています。
とは言え、フルハーネス型の方が圧倒的に安全性に優れているので、作業に支障が出ないのであれば胴ベルト型から切り替えるのがベストです。
2022年1月2日以降、完全に切り替わっているのに守らなかった場合は、事業者に対して6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金という罰則が課せられることになります。
また、安全衛生特別教育を受けずに高所での作業業務を行った場合も、処罰の対象になるので注意しましょう。
新規格のフルハーネスを選ぶ時には、以下の点に注意して購入しましょう。
市販されている一般的なフルハーネスの耐荷重は、100kgまでとなっています。
そのため、体重が100kg以上の人が着用すると、重さに耐えきれない可能性があり安全が保証されません。
もし、利用者の体重が100kgを超えている場合は、耐荷重が100kg以上かどうかをしっかり確認しましょう。
ランヤードは、フックをかける位置や適応している地面からの高さが製品によって異なります。
そのため、作業場所に適しているかをチェックしておかないと、作業がやりづらくなってしまいます。
安易に、「ランヤードが長ければ良い」という選び方をしてしまうと、落下した時に地面に到達してしまうこともあるため、作業場所に適したものを選びましょう。
フルハーネス義務化では、「旧規格の廃止」「作業現場の状況によっては特別教育の受講が必須になる」など、さまざまな事項が変更になっています。
万が一、事故が起こった際に義務化を遂行していなかったとなると、懲罰が科せられてしまいます。
もちろん「知らなかった」では済まされないことなので、しっかりと内容を把握して遵守することが重要です。
新規格のハーネスを用意するのは手間がかかりますし、費用の負担もありますが、作業員の安全を守るためにもフルハーネス義務化に従って作業を行いましょう。
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