工事現場において、高所で作業をする時は、単管を組み合わせて「足場」と呼ばれる仮設構造物を組み立てます。
この足場を組み立てる資材の中に「アンチ」と呼ばれる資材があります。
アンチとはどのような用途の資材なのか、その種類や寸法、重さについて解説します。
足場を組み上げる時には必ず使用する資材の1つですので、覚えておきましょう。
高所作業を行う時には、単管と呼ばれるパイプを組み上げ「足場」を作らなければなりません。ですが単管はパイプなので、そのままでは滑りやすく、足元は不安定です。
そこで、実際に作業者が歩く通路や、安全に作業を行う床が必要となってきます。
アンチはこの通路や床板として使われる資材です。
アンチという名前の由来は「アンチスリップメタル」というもので、鋼板に穴を空け、滑り止めが施されています。
アンチは布板とも呼ばれ、足場の中でも枠組み足場と呼ばれる足場を組む時に使われます。
足場を組んだ時に通路や床板として使われる資材には、アンチ以外にもいくつかあります。
足場板は高所作業用に組み立てられた仮設構造物の中で、作業者の通路や作業床として使う板状の足場資材です。
スチール製やアルミ製の足場板が主流ですが、中には合板や杉の木の板が使われている場合もあります。
例えば、神社の改修や国宝などの修繕では、単管パイプなど金属製資材を使った足場が組めず、丸太を使って足場を組むケースがあります。
このような場合は、木製の足場板を通路や作業床として使用することになります。
単管パイプを使い組み上げた足場の床材として使用されます。
メッシュ素材で、パイプに引っ掛けるフックが付いたもののことを「踏板」と呼びます。
メッシュ素材なので通気性がよく、雨水などが溜まる心配がありません。また軽量なので楽に持ち上げられます。
踏板は主に一側足場(ひとかわあしば)に使われます。
一側足場は一本の支柱に腕木(ブラケット)を出して、その上に踏板を並べて通路や作業床として使います。
比較的狭い場所で使われる足場で、戸建て住宅などの建築や外壁塗装の際に組まれます。
アンチは鋼板に穴を空け、表面に凹凸を付けて滑り止めとして加工され、左右には建枠に引っ掛けるフックが付いています。
踏板に比べると重量があり、頑強な造りとなっています。
ただ、中にはメッシュ素材でできたアンチもあります。アンチのことを踏板と記載するメーカーもあるため、混同しやすいかもしれません。
踏板が一側足場に使われる資材なのに対し、アンチは枠組み足場に使われる資材と覚えておくと分かりやすいでしょう。
枠組み足場はビル外壁面に沿って組まれるなど、より高所の作業で組まれる足場です。
高層建築工事などで使われるため、頑強な造りであることが求められます。
また風にあおられないよう鋼板に穴を空け通気性が確保されています。
アンチの寸法は幅と長さが規格により定まっています。
幅は「ヨンマル」と呼ばれる40cm幅のものが主流ですが、平成27年7月の改正労働安全衛生規則の施行により、「ゴーマル」と呼ばれる50cm幅のものに移行していくのではないかと言われています。またゴーマルの半分のサイズとなる25㎝幅のアンチもあります。
長さはインチ規格とメートル規格の2つがあります。
もともと枠組み足場が欧米から入ってきた技術であるため、欧米で主流となっているインチ規格のものが一般的に使われていますが、数字のきりがよいメートル規格の資材を使う場合もあります。
2つの規格には互換性がないため、どちらの規格で足場を組むのかを正確に理解し選択しなければなりません。
高所まで運び上げなければならないアンチですが、頑強に作られているためその重量は決して軽くはありません。
おおむね1枚あたり10~16kgほどあります。もちろん、アンチの寸法により重量には違いがあります。
メートル規格のアンチの重量の一例をご紹介しましょう。
幅50cm、長さ1800㎜:16.0kg
幅50cm、長さ1200㎜:10.4kg
幅50cm、長さ900㎜:8.4kg
幅24㎝、長さ1800㎜:8.3kg
幅24cm、長さ1200㎜:5.9kg
幅24cm、長さ900㎜:5.1kg
メーカーによってもアンチの重量は異なります。
軽量なメーカーだと幅50cm、長さ1800㎜のアンチが14.6kgというものもあります。
また鋼板製のアンチに比べると、メッシュ素材のアンチの方が重量は軽くなります。
高所作業用の足場の中でも、枠組み足場というタイプの足場の通路や作業床として使われる資材が「アンチ」です。
その特徴は鋼板に穴を空け通気性がよい点、表面に凹凸加工をすることで滑りにくい点、さらに左右には建枠に引っ掛けるフックが付いている点があげられます。
高所に運び上げる必要があるアンチですが、重量は決して軽くはありません。
また寸法はインチ規格とメートル規格の2つの規格があり、互換性がないため、どちらを使うのかを正確に把握しておく必要があります。
従来は「ヨンマル」と呼ばれる40cm幅のアンチが主流でしたが、安全性向上のために50㎝幅の「ゴーマル」と呼ばれるアンチに移行していく可能性があります。
©2023 SEISHIN KASETSU inc.