戸建住宅やマンションやアパートやビルなどを建てるときに、欠かすことができないのが足場です。残念ながら建築現場での転落による死亡事故はゼロではありません。
しかし、ヘルメットや命綱の着用をはじめ、いろいろな対策がとられています。中でも「手すり先行工法」を取り入れることで、働きやすい安心感のある足場につながっています。
今回は手すり先行工法について、詳しく紹介しましょう。
手すり先行工法とは、足場を組み立てるときと解体するときのいずれの場合も、常に手すりがある状態で作業を行えるようにする工法です。そのため、足場からの墜落、転落を防止できる画期的な工法となっています。足場の組み立て時には作業床の最上層に手すりを先行して設置し、解体時には最上層の作業床を取り除くまで手すりを残します。
働きやすい安心感のある足場とは、足場の全層に「二段手すり」と「幅木(つま先板)」を設置することを指します。足場の使用時にあらかじめ二段手すりと幅木が備えることで、足場で作業をする者の墜落などが物理的に防止できる以外にも、高所で働く作業員の心理面の緊張状態を緩和する効果も期待できます。
従来の足場では、最上層には手すりがなく、「交差筋かい」だけしかありませんでした。そのため、足場を組み立てるときも解体するときのいずれも、墜落や転落の危険性がありました。
しかし手すり先行工法を用いれば、いつでも手すりがあって守られた状態で作業ができるたます。高所で作業をする人にとっては、まさに画期的な方策なのです。
手すり先行工法にはガイドラインがあります。実際に建築現場で行われている手すり先行工法の好事例を基にして、墜落・転落災害防止のために望まれる対策をとりまとめたものです。手すり先行工法に関するガイドラインは、平成15年4月1日に厚生労働省によって策定されました。
また、国土交通省と農林水産省では、平成15年度から「手すり先行工法に関するガイドライン」を工事共通仕様書に追加して、直轄工事では全面適用となっています。同ガイドラインには、組みあがった足場について、働きやすい安定感のある足場の基準も併せて示されています。
足場を使用する全ての現場で「手すり先行工法に関するガイドライン」を遵守し作業を行うことによって、足場からの墜落、転落事故を激減させられることは間違いありません。建築現場の死亡事故を失くし、快適な職場環境を形成するために、「手すり先行工法に関するガイドライン」は策定されたのです。
手すり先行工法には、以下の3つの方式があります。
手すり先送り方式とは、足場を組み立てたり解体したり変更する作業の中で、足場の最上層に床付き布わくなどの作業床を取つける前に行われる方式です。最上層の一つ下の層に位置する作業床上から、建て枠の脚柱等に沿って、上下スライド等が可能な手すりまたは手すり枠を、当該作業床の端となる箇所に先行して設置します。
手すり据置き方式とは、手すり先送り方式と同様に、足場を組み立てたり解体したり変更する作業の中で、足場の最上層に床付き布わくなどの作業床を取つける前に行われる方式です。最上層より一層下の作業床上から、据置き型の手すりもしくは手すり枠を当該作業床の端となる箇所に先行します。最上階の作業床を取り外すときには、当該作業床の端の据置き手すり機材を残置します。
手すり先行専用足場方式とは、足場の最上層に作業床を開設する前に、手すり機能を持つ部材をつくる方法です。該当する作業床の端の部分に、最上層より一つ下の層の作業床上から、手すりとなる部材を設置します。また最上層の作業床を取り外す場合は、該当する作業床の端に、手すりとなる部材を残して行うことができる構造となっています。手すり先行専用足場方式には、「専用の建わくと手すりわくとの組み合わせによるタイプ」「手すりが建わくと一体になっているタイプ」などがあります。
働きやすい安定感のある足場には、以下の2つの種類があります。
手すり先行専用足場型とは、「手すり据え置き方式」または「手すり先行専用足場方式」によって組み立てられた足場です。あらかじめ、二段手すりおよび幅木の機能を有する部材が足場の構成部材として備えられています。
改善措置機材設置型とは、「手すり先送り方式」「手すり据置き方式」または「手すり先行専用足場方式」で組み立てられた足場のことです。足場の設置状況において、単体もしくは複数の改善措置部材を取り付けられています。改善措置機材には、「二段手すり」「幅木」「手すりわく」「金網」「ネットフレーム」「メッシュシート」「安全ネット」などがあります。
建築工事における転落事故防止のために、工事現場では「手すり先行工法」が採用されています。手すり先行工法に関するガイドラインも策定されているので、しっかりと守り、安全に工事を完了できるように努めることが大切です。
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