建築工事を行う際には、安全に高所作業ができるように、また作業の効率をアップするために足場を組みます。
ジャングルジムのように、鉄の棒を縦横に組み立てられている足場は、一見単純な構造に見えるかもしれません。
しかし、人間がそこに立って作業を行う場所なので、組み立てには注意が必要です。
ここでは、足場を組み立てる時に注意するべきポイントや、組立に資格が必要かなどを解説していきます。
建築業界には本設と仮設という言葉があります。
足場は作業を行うための仮設設備であり、足場を使って完成する建造物が本設となります。
足場は仮設となるので建築工事が完了すると撤去しますが、だからといって適当に組み立てて良いものではありません。
足場があるからこそ、建築を行う職人さんは安全かつ効率よく作業ができるので、工事内容や周囲の環境をしっかり把握して組み立てていく必要がある重要な構造物なのです。
足場は、高所で建築作業を行う職人さんのために組み立てるものです。
つまり、高いところまで鋼製のパイプを組み立てていくので、足場職人の安全性もしっかり確保しなければなりません。
そのために注意しなければならないポイントを、チェックしていきましょう。
足場工事で注意するべきポイントの一つめは、安全点検を徹底して行うことです。
どれだけ工数をこなしていても、長年の経験があっても、足場の種類に合わせてチェックリストを用意し、安全点検を実施しましょう。
現場によってチェック内容は異なりますが、以下が主なチェックポイントになります。
・足場部材に損傷がないか
・足場部材に緩みがないか
・足場部材が取り外されていないか
・工具や材料が作業床に散らかっていないか
・脚部に異常がないか
・風に飛ばされるようなものが置きっぱなしになっていないか
上記の点をしっかりチェックし、安全だと確認ができるまでは絶対に作業を始めないようにしましょう。
安全点検は、作業員の命に関わることなので、適当にならないようにしてください。
いくら現場の安全が確認できても、作業中には何が起こるのか分からないので、安全措置を講じることも必須です。
厚生労働省のデータ「令和4年の業種・事故の型別死亡災害発生状況」(※)によると、建設業の墜落・転落の死亡事故は24件で、死亡原因の中でも一番多い数字となっています。このような事故を防ぐためにも、下記のような安全措置を講じなければなりません。
・手すりや幅木の設置
・建地と床材に隙間を作らない
・上さん、中さんの設置
近年では、手すりを組立前に設置し、解体時は作業床を外すまで手すりを残す「手すり先行工法」を採用する現場も増えているので、墜落防止のために取り入れてみてもいいでしょう。
足場を組み立てたり解体したりする時には、建築物はもちろん植木や花壇など顧客の所有物を傷つけないように注意しましょう。
芝生に作業道具を置いたり、植木にパイプが当たったりするだけでもトラブルになることがあります。
顧客との信頼関係が失われると、当然ですがその後の仕事にも支障がでるので、どのように作業を進めるのか、事前にしっかり打ち合わせをしておきましょう。
基本的に、足場の組立作業には資格は必要ありません。
ただし、高さ5m以上の足場や吊り足場のような特殊な構造物の指揮は、資格を取得した人だけが行えます。
資格は職人としてのキャリアアップにも繋がるので、どのような資格を持っていると良いのか見ていきましょう。
足場の組立て等作業主任者は、吊り足場や張出し足場などの組立や解体、変更作業を行う時に指揮監督者となれる国家資格です。
実務経験3年以上、土木・建築学科卒業などの受講条件はありますが、技能講習を修了後、学科試験に合格すると資格を取得できます。
とび技能士は、足場の組立や解体だけでなく、掘削や土止め、作業の段取りなどの能力が保証される国家資格で、1級から3級まであります。
3級は受講条件なし、2級は実務経験2年以上、1級は7年以上もしくは2級合格後2年以上、3級合格後4年以上の実務経験が受講条件となります。
建築物等の鉄骨の組立等作業主任者は、高さ5m以上の鉄塔や建築物の金属製骨組みの組立や解体、変更作業などを行う指揮監督者になれる国家資格です。
鉄塔や金属製骨組みの実務経験3年以上もしくは土木・建築学科卒業で実務経験2年以上という受講条件がありますが、学科講習と修了考査をクリアすれば資格を取得できます。
建築は、経験や知識を持った職人さんが行いますが、それでもちょっとしたミスや油断が大事故に繋がる恐れがある現場です。
足場は、職人さんが安全に作業をするための重要な構造物なので、細心の注意を払って組立を行うことが重要です。
組立に絶対資格が必要、というわけではありませんが、資格を取得しておくことで、より安全性の高い足場が完成します。
また、資格を持っていれば仕事の幅も広がるので、興味がある方は取得を検討してみることをお薦めします。
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